「ソロモンの栄華でさえ、野に咲く百合の花一輪にかなわない」
とは旧約聖書の言葉だったと思うが、花々の美しさはその細部にわたって美しい宇宙が広がっていることである。
人が作り出した美は、それなりに美しいが、細部に細部にと分け入っていくとき、その美しさを失わずにいることはできない。
どのような芸術家であれ、熟達した職人であれ、とことん細部にまでこだわってもそれは有限であり、永久的に突き詰めて美を微小の中に求めることはできない。どこかで打ち止められるところがある。
しかし、自然の造化の美の花はそうではない。細部に細部にと美は宿る。
雨になって薄暗い日中、咲きだしたアジサイの花はハッとするような美しさを見せ始めている。
私が好きなのはガクアジサイである。ブーケのような幻想的な花びらが周りにあり、真ん中には色相は似通ってはいるが一つ一つ微妙に違う小さな小さな金平糖のような花が真ん中に密集して咲いている。
真ん中のもやもやした色調のところは小さな花がたくさん集まったところだ。
見ながら、どこかでよく似たものを見たぞ、と思う。
「あれは、どこだっけかなぁ」
そうだあれは『宇宙背景放射のゆらぎ図』だ。
見比べてみよう。わかりやすくするため、アジサイの花の真ん中を楕円に切り取った。
まず『宇宙背景放射のゆらぎ図』
そして下がアジサイ中心部の小さな花々