20140405
花見とお雇い外国人
『お雇い外国人』ってご存知でしょうか。明治維新は西洋文明を大急ぎで日本に取り入れ定着させようとする大改革でした。そのため多量の西洋の文物を輸入し、また西洋文明のシステムそのものは輸入できないので、幕末から明治初期にかけて優秀な日本人を西洋諸国に留学させたりしました。
何とか日本人だけで主体的に西洋文明を取り入れ消化し、自分のモノにしようと努力しました。西洋人に安易に頼ることは生まれたばかりの明治国家を半植民地にしてしまう危険性があったのです。しかし当時の最先端技術の習得はどうしても日本人だけでは無理なものがありました。そこで明治政府は高給で(当時の日本の大臣に匹敵するくらいの給与)外国の技術者を日本に招へいして指導を乞いました。これを『お雇い外国人』と言います。
彼らは驚くほどの高給、高待遇で招かれましたが、あくまでも日本政府の「お雇い」、日本人の技術者見習いが技術を習得すれば、やがてお払い箱になる運命でした。主は日本人で、西洋人は「お雇い」で従、というけじめはしっかりつけていたのです。それにしても短期でお雇い外国人の先生から技術を吸収した当時の日本人技術者の優秀さに驚きます。もし日本人の技術者が育たなければ、明治国家の文明開化は破綻し、西洋列強からいつまでも未開国扱いで、やがて植民地にもなりかねなかったでしょうから。
そんなわけで『お雇い外国人』が活躍したのは明治初期から中期くらいまででした。この徳島にもその時期、『お雇い外国人』がいたのです。いったい何の技術者なのか?
今日ツレと一緒に花見に行っていてその『お雇い外国人』を見つけました。ツレが桜とチューリップと同時に花見ができるところがあるというのでついて行きました。場所は脇町、何とも不思議な名前の公園だ!
「デ・レイケ公園?これ、人の名前じゃろか?」
「なんか、ドイツ語っぽいから、ドイツ人の名前かしらん?」
ちょっと見回してみると、おお、風車がある、そして三色旗
「あ、オランダさんやわ、それで、チューリップか」
ぐるっとめぐる
なんでここにオランダ人のデ・レイケさんなのか、家に帰ってネットで調べると、この花壇の横を流れる大谷川は大昔は暴れ川で多量の土砂が洪水とともに流れて当時の住民は困っていたそうだ。しかし江戸時代の土木技術ではどうしようもなかった。
そして明治維新である。土木技術のお雇い外国人であるオランダのデ・レイケさんが技術指導して、砂防ダムである『堰堤』をここにこしらえたのである。
左が今に残るその堰堤。ネットではこのように説明されています。
『美馬市脇町の中心を流れる大谷川の市役所脇町庁舎(旧脇町役場)近傍上流地点に「デ・レイケの堰堤」と呼ばれている砂防ダムがあります。この砂防ダムは、明治政府の御雇い治水技術者であったオランダ人のヨハニス・デ・レイケが命をうけて1884(明治17)年に吉野川を調査したときに、この大谷川をはじめとする徳島県北部の支川からの多大な土砂流出に驚き、その対策方法を指導したことによりできたものです。
当時は本県にもいくつかのデ・レイケの指導による砂防ダムがあったといわれましたが、現存しているのはこのダムだけです。』
当時は本県にもいくつかのデ・レイケの指導による砂防ダムがあったといわれましたが、現存しているのはこのダムだけです。』
最初はドイツっぽい名だと思っていたが、今思い出したが「・・イケ」という名はオランダ人に多いのだろう。幕末長崎の海軍伝習所のオランダ人教官も「カッテンダイケ」といって「・・イケ」だわ。
日本人がすごいのは短期間で技術を習得したばかりではありません。西洋の科学技術を習得するにあたっては外国人の先生とともに「マニュアル本」が必要です。先端の科学技術のマニュアル本は西洋語のつまり横文字の術語ばかりですね。それだと日本人の技術者が育ってもテキスト・マニュアル本は横文字で勉強しなければなりません。それでは日本に技術は定着しないというので、この時期(幕末~明治初期)になんとすべての横文字の術語を日本語(日本人が漢字で造語したのだ)に作り替えたのです。この漢字の術語の発明は物凄く重要でした。以後、専門書は日本語のみで勉強できるようになったのですから。この恩恵は中国韓国にも及んでいます。それらの国の科学技術の術語漢字はほとんどすべてこの明治初期の日本の発明を使っているのです。
デ・レイケさんの技術は「civil engineering」、もし直訳して漢字術語を作るとしたら『民間工学』、しかし明治人はこれを『土木工学』とした。江戸時代の堰堤、堤防は土石と木材で築かれるから、このネーミングの方が伝統にも合うし、その技術の内容も類推できて、今から思うといい造語だったような気がします。
必死こいてお雇い外国人から技術を習得する一方、まったく新しい術語も作らなければならなかったことを考えると、明治人の凄さをあらためて感じます。
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