2019年5月25日土曜日

猿が苦悩 その3 金星だの魔王だの中世にSF小説か

20190829

 これらが何者かという問いについては、当時、異類異形のモノという表現もありますが、だんだん「天狗」あるいは「鴉天狗」という名前が定まってきます。
 
 そして天狗さんなら高い山にいてそこからやってきているんじゃないかと漠然と感じていますね。そうそう、ワイらの里にもゴッツウ有名な天狗はんがいたわ。麻植郡の名峰「高越山」のてっぺんあたりです。高越天狗として知られています。
 
 ま、高越天狗などはローカルで全国的にはしられていませんが、有名なものはやはり平安京の近くですね。平安京の北西と北にある山にいます。愛宕山と鞍馬山です。ここにいる天狗さんはパワーをもった強力な天狗です。
 
 みなさんは愛宕山の太郎坊天狗は知らなくても鞍馬山の天狗はよく知っている人が多いですよね。なにせあの義経の幼少の頃(牛若丸と呼ばれてた)天狗さん相手に剣術の稽古をした話が有名ですからね。テレビや映画でおなじみですよね。それらを見るとどうも天狗さんは高い山を本拠にしているみたいですね。
 
 ここでちょっとやまさんの回顧
 
 昔、鞍馬山へ出かけました。牛若丸の修業の場、天狗の伝説にひかれてね。古い登山電車が通じていて鞍馬寺まではアクセスはよかったです。底から鞍馬山へも登りました。登ったといっても600mにも満たない山ですから難なく登れます。山そのものより山を経めぐる鞍馬遊歩道がなかなか良かったです。
 暗い杉の森、そして地を這うまるで大蛸や巨大イカの足のような杉の根、薄暗くひんやりした森厳な雰囲気で確かに霊気や何か人知を超えたモノの気配を感じますね。
 「天狗さんもいそうなところだ」
 そう思いましたね。

 もう30年以上にもなりますがここを歩いていて強烈な印象が残っている場所がありました。木立に囲まれたお堂のようなものがあり、そこに立札が立っていました。詳細な説明は忘れましたが、三つのキーワードは覚えています。
 ・・・・・・650万年前金星から、ここに大魔王が降り立った・・・・・
 この鞍馬山はその大魔王が神様として祀られているそうな。

 この話は現代に作られた話ではなく一千年以上も前に鞍馬寺開山より言い伝えられたものです。中世にもこんなモダンなSF小説のような話があるんですね。
 そんな場所にいる天狗たちですから、魔王の同類、子分かもしれません。また金星から降り立った。といいますが星からの渡来者だとすると妖霊星と天狗も関係しているかもしれませんね。
 
 回顧終わり!

 ところで、天狗や鴉天狗さんの衣装をよく見てください。ある人々に似ていませんか。

   この人々、もちろん人間ですが、修験道を行う行者さん、山伏とも呼ばれています。上の写真に出ている鴉天狗の衣装と同じですよね。この人たちは宗教の修行者のような気がするんですが、何の宗教でしょうか、仏教の一派?ある神社の神人?

 律令国家体制では僧侶は国家の公認を必要としますし、神社も律令制のもと神祇官が官弊社を統括していました。

 これらの人々は宗教の実践者、修行者ではあるけれども、そもそもは何処にも属さないアウトロー(異端者、部外者)なのです。体制派の仏教寺院、神社側から見ると、けしからぬ教義を持ち、勝手に修行と称し、祈祷、治療を行い大衆を惑わす者として、迫害されるべき人々だったのです。(ただし江戸時代になると醍醐寺や聖護院などに取り込まれ体制の中に組み込まれます。だから今の人から見ると近世以前にこれが迫害されるアウトローの人々だったとは思わないでしょうなぁ)

 アウトローであるからこそ、里には住まず、山岳を本拠として自然の中で修業することが多かったのです。追放者のような生活ですが、里人のように土地にしばられ、地頭に支配されることがないため、ある意味自由でした。尾根伝いに山岳を縦横無尽に行き来します。だから彼らの通信、交流のネットワークは全国に広がり、その結果として驚くべき情報の速さ、移動の速さを持っていたのです。

 頼朝の鎌倉幕府の探索の目をくぐり、京から奥州平泉まで逃避行を行った義経一行の格好を思い出してください。上記のような山伏の格好をしていたではありませんか。それを見ても彼らのネットワークのすごさがわかりますね。

 アウトローで税も納めない。領主の支配も受けない。こんな奴らが増えたら困りますわなぁ。里人と一緒になって、ぶち殺せとまでは言わんでしょうが迫害・差別はされるでしょう。彼らの方もできるだけ目立たず、接触せず、(ま、頼まれたら祈祷はするが)暮らしたんでしょうなぁ。

 山に住み、よくわからない彼ら、神出鬼没(尾根伝いに行けば思わぬワープ旅行ができる)と思われる行動、そして上記の衣装、それらが天狗伝説と結びついたんではないでしょうか。

 「な~~るほど、そんで、天狗さんは山伏の格好しているんかいな」

 鎌倉時代も末になり朝廷も幕府もどちらも支配力が衰えてくると、山岳にいるこれら支配に入らない自由民たち(山伏もいるし、ほかのものも)は、山岳だけでなく里にも下りて自己主張を始めます。体制派からは『衣類異形』のものとして扱われます。この頃になると天狗さんも大それた悪さをするようになります。

 次回はなんと天狗さんが国家中枢に現れ悪さをしかけます。それについてお話します。
つづく

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