江戸の裏長屋に住むご隠居やま爺さんのお楽しみ
なんぼう江戸時代好きでもタイムマシンがあるわけじゃなく、ワイがいくら好きで住みたいと思っていても現実に江戸時代の裏店長屋での生活は残念ながらできません。それならばと、最近老人性痴呆が進み、呆けてきて白昼夢を見ることが多くなったこのごろ、妄想頭を江戸の夢に切り替えて、江戸のご隠居暮らしを楽しむことにしました。
やま爺さん、還暦をとうに過ぎ、連れ合いは無し、九尺二間の長屋で一人暮らし。現代なら独居老人で要注意マークですが、江戸はありがたいことに今よりもず~~~っと敬老精神があります。ま、衛生・栄養状態が悪い江戸時代、還暦まで生きる爺さんが少ないから希少価値もありますがね。だからみんな親切、向こう三軒両隣、常に
「ご隠居さん~お元気ぃ~」
と声をかけてくれたり、惣菜のあまったものなどいただいたりしている。戸に鍵がかかるわけじゃなし、のべつ幕なし近所連中が断りも無く自由に出たり入ったり、今のようにプライバシーなどない時代、ふんどしを締めなおすのにふりチンでいて、ガラッと戸をあけられ見られたことも二度三度、ちょっと恥ずかしいこともあるが、おかげで孤独死などの心配はない。
いたって気楽なご隠居爺さんだ。暇はたっぷりあるが、銭はそうあるわけではない。隠居道楽を楽しみたいが、金のかかるのは敬遠しがちだ。江戸の楽しみの最大の華『吉原の花魁(おいらん)遊び』なんかする金もないし、幸か不幸か還暦過ぎて息子がさっぱり起き上がらない。
かといって近所連中のジジババのように日がな一日江戸中の神社仏閣を、今日はここ、明日はあそことめぐり倒すのもいやだ。確かに健脚ならそれもいいだろう。金もそう使わない。年寄りの楽しみはこれが一番という人もいる。やま爺さんは神社仏閣は嫌いではないが、足もそう強くないし、いかにも!年寄りだ!というようなジジババの楽しみは敬遠している。
そんなやま爺さんの楽しみは今のところ三つある。どれも少しは金を使うが、銭で済む(もっと贅沢な金遣いだと銀何匁とか金貨・両、分、朱を使うことになる)
その三つとは次の楽しみだ。参考まで一回の入場の銭をあげておく。
◎ 湯屋(銭湯の事ですわ) 10文 ※安いから毎日通う
◎ 芝居 平土間あるいは切りとおし席で数百文 ※評判の狂言は見るが、ま、月に1、2度かねぇ
◎ 寄席 落語、講釈、その他の芸を楽しむ、毎日ではないが町内に一軒あるので頻繁に行く
今日はその中から湯屋(銭湯)の老いの楽しみをご紹介します。
湯屋はこんな感じ うふふ いいなぁ~~
江戸の湯屋が開くのは朝、当時の時刻で五つ前(午前八時前)、今と比べるとずいぶん早い。やま爺さんはご隠居の身分なので朝一番風呂に行く。朝の利用客は、堅気は少ない。と言っても今のヤァさんじゃないですよ。職人は朝は仕事にでる。おかみさん連中は朝は何かと忙しいからこれない。来るのはワイのようなご隠居、若いのに中気(体が不自由)を患ったもの、水商売の女性、遊び人、夜の商売のおあ兄さんおあ姉さんなどだ。
当時の湯屋はこんな構造物。寛政頃(18世紀末)から男女混浴の禁止がうるさく言われだして一応、男女別になっているが、男女別々の浴槽・洗い場などで二倍の設備投資がいるため、今でも小規模な町の湯屋は一つっきりの浴槽・洗い場で、混浴、当時は「入れ込み湯」と言ったが、がされていた。建前はお上の男女混浴禁止令の手前、時間を区切ったり、日にちによる男女区別があったが、そこはそれ、お目こぼしで、男女みんな仲良く入ったりしていた。
やま爺さんの町内の湯屋は比較的大きく、男女別湯だ。それでも女性湯船は男のより小さい。全体の構造は下のようなものだ。
さあ、湯の道具を持っていよいよ朝一の湯屋に向かう。
まず番台で湯銭を払う。一人10文だ。
番台はこんな様子だ。
こちらは女性の番台、下駄箱がある。
入るとゴザかむしろの間があり、そこで着物を脱ぎ、低い竹の棒が渡してあるところを越えると板の間の洗い場、そして奥には『柘榴口』があり湯船がさらに奥に隠れている。
夕方の込んでいる時刻は人が多い。その混み合っているときのようすが下の図だ。
ごちゃごちゃしているがよく見てほしい。
手前からゴザの間の脱衣所~細い竹の棒が低く渡してある向こうは板の間で洗い場、野郎どもが洗っている。
その向こうの足が見えているのが柘榴口でここから屈んで湯船に入る。
この図の詳しい説明はまたあとでしましょう。
なんちゅうことを さらすねん!
しかし今は朝一番の湯、上記のように混み合ったいるはずはない。朝は人少ない。そして朝の客筋が客筋だけに粋なおねえさんが・・・
「ちょいと、お兄さん~、そっち、言ってもいいかしら、お毛剃でもいたしましょう」
とか言って男の方の洗い場で婀娜な年増がいたりする。もちろんワイのような隠居はお呼びじゃないが、いなせな若い男などがお相手だ。
先ほども言ったように江戸は男女混浴にはうるさくない。女風呂には男の背中洗い人の三助や十手持ちの同心(捜査の情報のため女湯に入るのは許されていた)がいるし、反対に男風呂の方にも遠慮なくなんだかだといって女が出入りする。と言っても湯女のような性的サービスはキツイご法度でそんなのではなく、ま、普通の男女の付き合いだ。湯が空いてるときは夫婦ものが一緒に入って背中を流したりもするから、あんまり乱れたようにはとらないでくださいね。
ちょっと予感はしたが、ガラリと戸をあけて入ると洗い場では・・・・・・・・・
「おわっ~~~、いきなりかよ!」
おあにいさんが中年増に毛剃(ここの図では日本ばさみでトリミングだ)をしてもらっている。江戸では男女とも毛深いのはもてない。ふんどしから陰毛がはみ出るなどもってのほか、湯屋で毛抜き、毛剃をして身だしなみを整える。
「自分ですりゃぁ、いいものをなんちゅうこと さらすねん!」
このおねぇさん、堅気じゃない、なんでわかるか?眉をそり落としてないから娘か水商売か、娘じゃないわなぁ(おかみさんは眉を剃り落とし、鉄漿・お歯黒をつける)
それにしてもこの男!やまさんのスマホ陰〇開きやしんちゃんの蟹ばさみ〇唇開きは手の指だったのに足の指とは、器用な男もいたもんだ!
見慣れた光景なので特に気にも留めない。
いよいよ脱衣場で着物を脱ぎ、さあ湯に入ろう。
この後の湯屋についての話は
次回ブログにつづく
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